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2009年3月16日より
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 「一人で乗ってきなよ」というと、ミキは「えー」と唇を尖らした。「なんでよ」といって引き下がらないミキに「くるくる回るものは苦手なんだ」という言い訳をすると、「何よそれ」とあきれた声を出した。

「じゃあ、コーヒーカップも?」

「あれは、乗っている人の笑顔を見て、その楽しみを共有するものなんだよ」

 修治がそういうと、ミキは「むう」と何か考え込んだ。いつも、ただ見ているだけではないかといった意味の呟きをミキがもらして、その言葉に驚いた修治は思わず、「え?」と聞き返した。ミキは「なんでもない」とそっけなく答えると、すっと修治から目をそらした。

「じゃあ、私一人で乗ってくるからね。後で後悔しても、知らないからね」

 ミキは修治にそう言い放つと、本当に一人でメリーゴーラウンドのほうへと駆けていった。修治はそんな幼馴染の後ろ姿を、見つめていた。

 いつもただ見ているだけ、か。と修治は思う。幼馴染だけあって、なるほどなかなか的を射ている、と妙に納得してしまった。別れ際、小さくなっていく背中を見送るとき、自分はどうして当事者になれないのだろう、と繰り返し思った。物語の舞台は、常に彼らの目の前に開かれている。それなのに、どうして自分は脚光を浴びることをせず、ただ裏方に甘んじようとするのだろう、と。

 木馬にまだがってピースサインをこちらに送るミキを見て、彼女なら脚光を浴びることもいとわないだろう、と思う。

 ただ、自分が彼女の隣で同じように笑うには。ミキの笑顔はどうにもまぶしすぎるのだということも、修治にはわかっていたのだった。


 夕刻も過ぎてあたりには闇が立ち込めてはじめていた。もう一度ジェットコースターに乗りたいというミキに付き合った後、二人は観覧車のある高台へと向かい歩いていた。

「修治、・・・修治ってば」


  気づくと、いつの間にか修治はミキの前を歩いていた。ミキは、立ち止まっていた。そして、じっと修治を見ていた。

「どうしたんだよ」

  と、修治が尋ねるとミキは、

「ずっと思ってたんだけどね・・・」

  と呟いた。

「私たちって、どんな風に見えてるのかな?」

「・・・友達同士、とか?」

  ミキが一体何を言おうとしているのかがわからず、修治は怪訝そうな声になった。

「じゃあさ、こうしたら恋人同士みたいにみえるかな」

  どうしてか、にやっと笑ってそんなことを言ったミキは、突然修治の右腕に自分の左腕を絡ませて、腕を組んだ。驚いた修治が、

「いきなり何すんだよ」

  と無理矢理腕をほどこうとすると、ミキははじかれたように修治から離れた。何か言いたそうに口を開きかけたのに、何も言わずに目を伏せていた。

「ミキ・・・」

「いいじゃんか・・・」

  ミキがまるで絞り出すかのようにして、声を出した。修治は、ミキがうつむき下を見る姿を、じっと見ていた。落ちていく夕日が描き出した赤の中に、二人の影が長く伸びた。

「いいじゃんか。だってこれで最後なんだよ?」

「最後って・・・」

「引っ越しするんだ、私」

「・・・は?」

 たっぷり三秒修治の反応を楽しんだミキは、クスクスと小さく笑い始めた。

「やっと驚いたね。修治」

「何だよ、質の悪い冗談は・・・」

  やめろよ、と言いかけた修治を、ミキの言葉が遮った。

「冗談じゃない。こんな事、笑い話なんかにして、言わない」

  ミキは修治の顔を見ていた。いつもの彼女自身のやり方で、まっすぐに修治を
見つめていた。

「本当なのか?」

「うん」

  ミキは、頷いた。

「いつだよ」

「え?」

「だから、引っ越し」

「・・・明日」

  言いづらいことを言うときのミキの癖で、やはり彼女は再び俯き、そう答えた。修治は「そうか」と頷いた。

  ずっと、この関係が続くものだと思っていた。そう信じたがっている自分がいたような気がして、半分呆れ混じりの苦笑が漏れた。自分たちの未来すらもうまく思い浮かべることができないというのに、と思った。

「だから、これが最後のデートなんだよ」

  ミキの言葉は魔法みたいに修治のことを締め付けた。ミキは「ね」と修治に笑いかけ、また再び修治の隣まですすむと、今度は自然な動作で、修治の手を取った。

「行こ」

  ミキは修治の手を引いて、観覧車のあるところへとむかって歩き出した。修治はどこか楽しそうに笑う幼なじみの表情を、この強引さはいつまでたっても変わらないな、とある種のノスタルジを感じながら、見つめていた。


 続く・・・
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