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2009年3月16日より
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 お金を払って入場券を買う修治の隣でミキは「なぁんだ」と詰まらなさそうに口を尖らした。
 
「何だよ」
 
「おごってくれるかなって、ちょっと期待したんだけど」
 
「そんなお金はありません」
 
 というとミキは「そうだよね~」となんだか失礼な納得をした。「だいたいさ」という修治の言葉にミキは「わかってるよ」と口調を強くした。
 
「分相応の消費を心がけること、でしょ」
 
 わかってるなら言うなよな、と思いながらミキのことを見ていると、ミキは「なんでアルバイトしないのさ」と修治に尋ねた。
 
「親からもらったお金でそういうことしないのはある意味えらいと思うけどさ、自分で思うように動かせるお金がないと、女の子に何か買ってあげることもできないじゃん。そんなんじゃもてないよ」
 
 ミキの言葉に、修治はなるほどそれは正論かもしれない、と頷いたが、ポツリと、
 
「やりたいことがあるから、今はそれの準備中なんだ」
 
 とも呟いた。歩きながらずっと自分の足元ばかり見ていたせいか「そうなんだ・・・」と返したときのミキがどんな顔をしていたのかはわからなかった。
 
「私には無いからな、そういう、やりたいこと、とか」
 
「今から見つけていけばいいだろ」
 
 修治がそういうと、ミキは「・・・うん」と小さく頷いた。
 
「あのさ、修治」
 
 人の流れに沿って園内に入る。平日のせいかそれほど込み合ってはいなかった。「並ばなくても乗れるよ」とミキは嬉しそうに言った。
 
「あたし、慎と別れたよ」
 
 ミキは、立ち止まっていた。後ろを振り返ってみると、まったくミキらしくない方法で、口を結んだ彼女が見えた。
 
 修治は
 
「ああ、そうなんだ」
 
 と呟いた。
 
「やっぱり驚かない」
 
 とミキは悔しそうな表情をして、「こんなことくらいじゃ驚かない?」と修治に尋ねた。
 
「何か、よくわからないんだよ」
 
 と、修治は答えた。ミキが園内地図で新しくできたジェットコースターのエリアを指差して、二人はそこに向かって歩き出した。
 
 
 
 
 
 ジェットコースターに乗り込んで、滑り降りるために少しずつ上昇するこの瞬間がなかなか好きになれない、とミキに言うと、けろっとした表情でこれはこれで面白いよ、という言葉を返された。ジェットコースターが上昇する間、ずっとレールの天辺に吸い込まれては消える鉄の鎖を眺めていると、ミキが隣で口を開いた。
 
「あたしだって、わかんないよ」
 
 と。
 
 コースターが頂上まで昇りきって滑り降りるとき、まるでどこかに叩き落されるかのように体が浮かぶのを修治は感じた。
 
「慎と付き合うって言ったとき、絶対に合わないからやめとけっていったの、修治覚えてる?」
 
「ああ。うっすらと、だけど」
 
 終点が近くなって、コースターは次第に速度を落とした。ミキは隣に座る修治を見て「修治は全然怖がらないから面白くない」といって唇を尖らせた。
 
「あの時はそんなことないってすっごく言い合いしたけど、本当はちょっとうれしかった。それはきっと、私のことを思っての忠告だって思ったから」
 
 あの時、慎ってどんな人なの、と尋ねられて、どんな人なのかもわからない人とどうして付き合おうと思えるのかわからない、と言った。あの言い合いの末にかかってきた電話の声が泣いているように聞こえて、「それでもあたしは慎と付き合う」とミキが言ったその声は、心なしか震えていた。
 
「俺には、もう後には引けなくなったミキがただ意地を張っているだけに見えたから、それで余計にわからなくなった」
 
 と修治は言った。ジェットコースター乗り場を離れて、次のアトラクションに向かう途中のアイス売り場で、二人は金を払ってアイスを買った
 
「あの後さ、修治に言われた通りすぐに慎とはうまくいかなくなった。別れたのはここ最近でも、本当はその三ヶ月くらい前からもう連絡も取り合ってなかった。で、思ったんだ。修治は最初からこうなるってわかってたんだなって」
 
「・・・わかるよ、それくらい」
 
 だってもうずっとミキの事を見てきたのだから、と修治は思った。幼馴染で、ずっと傍にいたのだから、と。
 
「幼馴染か」
 
 とミキが呟く。
 
「あの時、慎と付き合い始めたときは、ちゃんとわかっていたつもりなのに。なんで、私が慎と付き合おうと思ったのか、今はもうわかんないんだ。ほんと、なんでだろう。修治のほうが、慎より私より、ずっと私のことわかってくれてたのに」
 
 ミキはアイスのコーンをかじった。ずっと自分の手元ばかりを見つめていた。
 
「もしさ、二人が幼馴染じゃなかったら、どうなってたのかな、私たち」
 
 ミキがそう言って、それから、本当は幼馴染じゃなかったほうがよかったのに、そうしたら、こんな気持ちにならずにすんだ、と悲しげな声を出した。
 
 それを聞いても、修治はやはり、メランコリーな台詞はミキには似合わないと思うのだった。
 
 彼はただ、静かに首を振り、
 
「それでも、俺は俺だし、ミキはミキだよ」
 
 と呟いた。ミキは「・・・そうだね」といってまた小さくコーンをかじっていた。


 続く・・・
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